宿命の軌跡
黄泉竈食ひ(よもつへぐい)を
口にしてしまったのだろうか
・
ここはどこだろうか
荒涼たる砂漠の片隅に一人立つ
オアシスの幻想
ナスティカの地上絵を
足でなぞる愚かさに
鳥瞰することのできない歯痒さ
・
黄泉の国の食べ物を口にすれば
現世には戻れなくなる
異界の民として生きる他なく
メデューサの頭に潜む蛇の戯れ
駆け抜ける駿馬が左目だけを
フォーカスして嘲笑している
・
禁断の果実を食べた
アダムとイヴなら
どれほどの流涙を続けようとも
二人で原罪を
背負って行けるだろう
・
黄泉竈食ひを口にした挙句は
異界の禍を独り背負って歩く宿命
その姿は
恒久の旅を続けるノマドに
相応しいのかもしれない
この漂流はどこまで続くのだろう
