対岸の蛙

静かに流れる

清流の岸辺に

一匹の蛙が

鳴いていました。

対岸にいる

もう一匹の蛙に

気づかれるよう

鳴いていました。

それでも

対岸の蛙は

気づかない

ものですから

その蛙は

大きく跳躍して

川に飛び込みました。

サブンという大きな音で

気づいてもらえると

考えたのです。

それでも

対岸の蛙は

その音に

目もくれませんでした。

蛙にとっては

思ったより

川の流れははやく

流されてしまいました。

一生懸命泳ぎました。

そしてとうとう対岸に

たどり着いたのです。

そこからは一目散に

上流へとピョンピョン

跳びはねて

対岸の蛙に

会いに行くのでした。

もう二日も

経過していましたから

対岸の蛙の姿は

何処にも

見当たりませんでした。

その場所には

綺麗な赤いお花が一輪

咲いていました。

蛙は同じ赤い花を

見た記憶がありました。

そこで

その場所へ

行ってみることにしました。

ピョンピョン跳びはねて

ようやく

赤い花の咲く場所に

たどり着いたのです。

赤い花に隠れて

もう一匹の蛙が

嬉しそうに

こちらを見ていました。

「心配していましたよ」

対岸の蛙が

そう、言ってくれました。