常夜灯
月影の気配に鳴き声が漏れ
所在も分からぬまま
深い森の中にさらされていた
心象の営みだけが歩いている
足を交互にすべらせて急いでいる
途絶えた道筋に
臆病は立ち止まることを知らず
茂みの中を走った
背後から鷲爪に追われ
生き延びるための走り、に迷い込んだ
冤罪の手錠が光沢を帯び
内在していた憂いを
地面にたたきつけた
意識が遠のいていく領分をまたいで
見覚えのない老人が
ランプを置いて立ち去っていった
( 詩と思想 土曜美術出版販売 2017.06.入選作 )