旅愁

小舟に乗って

たたずんでいた

 

進むでもなく

ただぼんやりと

静寂に身を

任せていた

 

ほんの時折

鯉が飛び跳ねる

音がするような

気がした

 

月が忍び寄り

わたくしを

抱擁した

 

いつの間にか

小舟には

月より訪れた

姫君が

同じように

たたずんでいた

 

やはり

進むでもなく

ぼんやりとしたふうに

静寂に身を

こがしていた