時の盗人
泥棒になりたいと
考えたことが一度だけある
あなたの過去のすべてを
盗み出してしまいたいと考えた
時の盗人になって、
盗み出すのは
あなたの過去だけでいい
あなたを誰よりも
見つめ続ける旅人でありたい
あなたを絶えず近くに想い
すべてを知ったうえで
すべてを許して
すべてを忘れてしまおう
あなたの過去のすべてを
そして
現在すら分からないのに
未来に架け橋を作ろう
あなたが消えてしまわないように
たおやかなその手を握りしめたまま
あの丘に登って
あなたのように美しく香る
あの花に水をやりにいこう
あなたは振り向きざまに微笑むだろう
その瞬間を瞬きもせずに、ただ待っている
もう悲しみはいらない
微笑みだけがあればいい
二人だけの世界の中で
手を握りしめたまま
生きていく