時代
通り過ぎてしまった人混みに、興味をなくし
た。関わりの中でなら笑顔も増えるだろう。
通り過ぎた誰もかれもが、ディスプレイの行
き違えるマネキン。哀しみに揺れることも、
微笑んで支えることも、なくなってしまう。
けなげな女の肩を引き寄せても、ガラス窓の
向こう側。
昔は優しい人だったと言われるのも
迷惑な逸話
新しい宇宙がやってくる。そう思うと、弾ん
だ感情が誘い出すのは、マネキンから鋼鉄が
錆び割れた音。響けば響くほど、ひとけのな
い公園に、ブランコの奏でる摩擦音のノスタ
ルジー。
今となっては、はかない悪戯
新しい宇宙から予測もつかない未知の光沢と
匂いが、ノスタルジーをきっぱり消し去って
湿潤な未知を到来させようとしている。