時間旅行

暑かったよね

あの夏

そういえば

足がやけどしそうな

砂浜に

忘れ物したことを

思い出したんだ

日よけのパラソルさ

新調した綺麗な

白いパラソル

だけど

潮風に持って行かれて

砂だらけ

しゃくにさわって

砂浜に転がして

その上に

砂の城を作って

笑っていたよね

あの夏の

あのパラソル

最初に開いた時の

仕草まで覚えているよ

嬉しそうだった

僕には眩しかったよ

白いパラソルと

黒のビキニ姿の

コントラスト

思い出の中にだけ

生きているコントラスト

今頃きみは異国の地で

どんな暮らしを

しているのだろう

相変わらず

潮風に吹かれて

海を眺めているんだろうね

随分時間は流れたけれど

本当は もう一度

同じ海を見ていたいんだ

ギリシャの高台から

青い地中海を

眺めているきみの

長い髪のなびく香りを

感じていたいんだ

だけどね

僕は偏西風に吹かれながら

ポルトガルの古い街並みから

大西洋を眺めていることにするよ

ステンドグラスで飾られた本屋で

本を読んでいることにするよ

街のどこかで逢えたらいいね

きみにはきっと

わかると思うよ

僕がいる場所