東京

三十五年前の東京

ビルがことさら高く見え

スクランブル交差点を

行き交う人々と

目を合わそうとしても

合わしてくれる人は

いやしなかった

群衆の中の孤独

 

五年前の東京

空がことさら低く見え

ビルとビルの合間を

通り過ぎていく風が

やけに冷たく乾いていた

行き交う人々の中で

群衆の中の孤独を

感じることもなく

感性がさび付いたのか

それとも経験値が

問題にするほどのことでも

ないと判断したのか

 

東京に憧れも幻想も

いだかなくなっていた

特に構える必要もない

都市に変容していた

 

私が変わったのか

東京が変わったのか