棒おじさん
毎年
この時期になると
ぼくの仕事って
何なのだろうって
考える
鼻や口に棒を突っ込んで
ばかりいる
ある意味、
嫌われ役だ
棒おじさんなんだろうか
これって
本当に医者の仕事なのだろうかって
調べなくても分かる場合もある
なら、わざわざ棒を突っ込む
必要があるだろうか
こどもたちが可哀想に思えてくる
でも、親御さんは言う
家に赤ちゃんがいるから
心配だから念のために調べてほしいとか
それならまだいい
逆に積極的に調べることが多いだろう
ところが、
元気で待合室で走りまわっている
微熱の子供達
大人の都合で
検査をしなければならない
場合があるんだ
仕事があるから
白黒つけておきたいとか
保育園や幼稚園の先生に
お医者さんに行って
調べてもらってこいと
言われたからとか
医者の立場からいうと
診察の上でどうするかを
決めるのが普通のやり方
ちょっと愚痴を
言わせてもらいます
ご勘弁を。
「調べてもらってこいとは、
何事だ?
小児科医は、
保育園や幼稚園の先生
ご都合主義の大人たちの
いいなり奴隷ではありませんぞ
医は仁術なりというから
あまりいいたくないけど
迅速キッドの半分以上は
自腹を切って大赤字
①キッド千円相当
ぼくがお金を払って
患者さんからもらっていない
そして、さらに文句を言われる
そんな仕事って他にあります?
ぼくは、趣味にお金をつぎ込んでると
言い聞かして、我慢しているんです
医者は金持ちなんて言うけど
とんでもない
ボランティアですよ」
こういうこと、
ほんの少しでいいからわかってほしい
医は仁術なり
自分に言い聞かせる
結果、調べる必要性を
感じないと判断しても
保育園や幼稚園で
調べてもらってこいと
言われるから
調べてほしいと言われる
極端なときには
調べないと登園してはいけないような
雰囲気がある様子だ
いったいどうなっているんだろう
ぼくは医者なのだろうか
それとも
棒おじさんなんだろうか
登園許可書もいらないはずだ
厚生労働省は
必要がないと指導しているはずなのに
だけど、保育園や幼稚園の先生は
もらってこいという
それなら、園医に頼むべきではないのかなあ
ぼくは棒おじさんと
自分のことを思いたくない
ぼくは医者だ
どうして必要がないと
判断したときでさえ
園にいけないからといって
迅速検査をしなければならないのだろう
ぼくは医者だ
自分の診断力と
その子の置かれている状況だけを頼りに
検査の必要性の有無を決めたい
それができないジレンマが
ぼくを棒おじさんという、
奇妙な存在に仕立て上げるのだ
棒さして
嫌われて
お金を払って
文句を言われる
棒おじさん
こんな理不尽に
ほとほと
疲れ果てました
何度も言うけど
ぼくは医者だ
棒おじさんでは
決してない!