波音の午後

波の音に誘われて

気がつくと

浜辺で寝そべって

いた

 

さざ波の粟粒が

無心の境地へと

たなびいていく

 

暑すぎる夏の

波間に

ビロード細工の

万華鏡をのぞき

水平線を追う

 

鯨が潮を吹き

その真上で

腕を組みながら

空を見上げた

 

大きな宇宙と

小さな宇宙が

交差して

時間旅行が

始まりを告げる

 

暑い夏の午後

波の音が日常を

違うものに

変えてゆく

 

おそらく

ひとは誰しも

海に帰って

いくのだろう

 

ひとりで・・・

それとも、

ふたりで・・・