湯けむり

仕事や日常生活のことは

除外すると

個人的な経験として

医学生時代が一番楽しかったと

心から思えるのはなぜだろう

膨大な医学知識を次から次へと

学ぶ中で、

心身ともに疲弊してしまうことも

幾度となくあった

そんな時、

露天風呂の湯けむりの中で

何も考えずゆったりと過ごす

時間と場所があった

あの頃が一番よかったと思えるのは

きっと湯けむりの中に紛れて

何も考えず、ぼんやり過ごすことが

できたからだろう

今の僕には「湯けむり」がない

のかもしれない

今なら、

温泉にわざわざ浸かる必要は

ないのかもしれない

「湯けむりに包まれる安堵感」

それさえあればいいのだろう

「湯けむり」のひとときが

僕を蘇らせるための

大切な時間