病気を診るとき

診察はね

待合室から始まっているんだ

 

待合から聞こえてくる

泣き声や咳の具合で

診察の優先順番を

変える必要があるかどうか

重症感のある子どもがいないか

受付スタッフ・ナースに確かめる

 

だから

いくら小さな開業医であっても、

僕の医療・診察には

診察室にいるナースと

待合に足を運んで

患者さんの様子や

必要に応じて

バイタルサインを

チェックするナース

最低二人はどうしても必要だ

 

受付スタッフ・ナース・医者の連携が

とても大切だと考えている

ひとり、ひとりの患者さんに対して

五人で協力してチーム医療をしているつもりだ

 

そして、診察室に入ってくるときの

雰囲気から注意して見ている

 

診察が始まると

五感をフルに使う

 

視診は大切だ

発疹の状態はもちろん、

おなかが痛くても

おなかだけを診察すればいいって

ものじゃない

おちんちんや足を見るのは

他に病気がかくれていないかどうか

確認するためだ

 

聴診は大切だ

呼吸の音もおなかの音もちゃんと診ないと

病気が見えてこないことがある

 

聴診の状態によっては

背中の打診も加える

共鳴音の確認や背中の叩打痛がないか

背中を打診するだけで

肺炎や腎臓の病気だってサインを

出してくれることがある

 

その上で、必要なら

鼓膜の所見もおさえるし、

鼻汁の吸引も十分にする

 

匂いも大切だ

脱水の場合だと

息を匂いだだけで特有のケトン臭がして

点滴レベルかどうかの判断に役立つ

 

便臭や尿臭だってそうだ

病気を見破るのに有効な手段になる

 

だから、

診察の邪魔になるような

匂いのするものを

持ち込まないように気を使っている

 

触診も大切だ

特におなかの病気の時

最小限必要なルーチンから始めて

症状と診察の状態で

気になる所見があれば

診察レベルを上げていく

 

 

特に子どもの場合には

言うとおりにしてくれないから

判断が難しい

その勘所の把握は

小児科医にしか出来ないと

プライドをもって診察にあたっている

 

冗談を言ったり

面白い話をしたりすることに

時間を費やすこともある

 

ただ、笑わせようとか

こびているわけではない

おどけた、出来の悪いピエロと勘違いされたくはない

 

それが、実は親子関係を含めて

様々な情報源になることがあるからだ

遊んだり、からかったりしているように

見えるかもしれないけれど

 

短い時間の中で

笑ったり泣いたりするときの顔の表情筋の動きから

手や足の動きに違和感がないかまで

細かく観察してる

 

ひとりひとりの患者さんたちと

真剣勝負をしているんだ

 

小児科医は

五感のすべてを総動員して診察にあたり、

さらにいろいろな角度から

切り込むことの出来る

コミュニケーション能力を発揮して、

病気を見破る名探偵でなければならない

 

小児科医は白衣を着ると

子どもが怖がるからと言って

白衣を着ない先生がいる

それはそれでとっても優しい考え方だ

 

でも僕は白衣は必ず着ることにしている

ウルトラマンや仮面ライダーに

変身するのと同じような気持ちだ

 

最初は怖がってしまうかもしれないけれど

白衣を着て、マスクをして

時にはゴム手袋までしていることがあっても

診察が終わったあとに

ハイタッチして、バイバイって

言ってくれる

 

全力で、一日一日、ひとりひとり、

最新の医学情報を提供しながら、

オレ流に天職をまっとうしていく。