白木蓮
ふと、思い出した
春先のこと
葉もつけずに
白い花を上向きに
少しだけ花びらを広げて
咲いていた
相手にしてくれない気高さ
白い小鳥が枝にとまっても
わからないくらいの
純白な花姿
風が吹いた
少しだけ開いた花びらの間から
水滴がこぼれ落ちて
額の上ににじんで流れた
白い小鳥が鳴いているのですか
白い花びらが泣いているのですか
そう言い残して
歩き始めた
白木蓮は泣いていた
白い小鳥は鳴いていた
幾度となく
口ずさみながら
小さな自然を
愛おしく想った