竹取物語

竹林に立つ

 

風になびく

竹のしなり、

竹の葉のゆらぎ、

爽やかに

安らぎを感じる

 

タケノコが

あちらこちらと

顔を出している

 

微笑ましく思ってみたり

掘り起こして食の足しに

してみたいと考えたり

 

竹林という群衆の中で

一本一本が同じ動きで

通り抜けてゆく風と

戯れながら

自然のオーケストラを

奏でている

 

その一本だけを取り出して

別の場所で

縦に割ったり

横に切ったりしてみる

 

庭の片隅で

水の流れに音色を加え

 

器の代用にすれば

美酒を生み

水を滑らかにし

品の良さを増す

 

竹の使い道は無尽蔵

 

竹林の竹は

どの一本を取りだしてみても

魔法のような力を秘めている

 

竹林のゆらぎは

群集心理を呼び覚ますが

 

竹一本であっても

群衆の力に頼らず

個の才能を発揮して

 

優れた装飾実用性を

兼ね備えていると、

証明してみせる

 

それは単に

空洞構造を持つと

いうことではない

 

群衆であれ

個としてであれ

懐古主義に潜入し

モダニズムに溶け

 

日常性に非日常性を

持ち込み

優美な芸術性を

露呈している

 

いにしえに

月へ戻っていった

かぐや姫は

その価値に

気づいていたのだろうか