紫陽花

最初は赤い色だったかもしれない

 

小雨に揺らされて

水彩画の絵の具のように

薄まったとき

通りがかりの視線で

照れ隠しの表情が

濃淡のある紫色になった

 

本当は花ではなくて

萼や茎で顔を被っただけ

かもしれない

香りが鼻に来ないのは

そのせいか

 

降り続く今となっては

立ち止まった人に

見そめられた色合いで

自信を持って

薄紫の花束を作っている

 

いたずらな雨水が

お気に入りの色合いを

流してしまっても

心配しないでいい

 

もうすぐ暑い日が来るよと

告げる表情はうるわしい

やおら役割を

向日葵に譲る時が近いのか