美しい寂しさ
いちご畑で
うさぎは飛び跳ねていました
・
しばらくすると
西風が吹き始めて
急にぽっかり
穴が空いた気がしました
・
どこに穴が空いたのか
見当もつかなかったので
とにかく近くにある草を
むしゃむしゃ食べ始めました
・
おなかがふくれて一息ついくと
空いた穴のことは
すっかり忘れていました
・
一眠りした後、なんだか
動き出してみようと考えました
よくわからないけれど
いちご畑をあっちに行ったり
こちらに飛び跳ねたりしました
・
そんな時
もう一羽のうさぎに出会いました
・
何も言っていないのに
もう一羽のうさぎは
飛び跳ねるなり
うさぎの鼻を
ぺろぺろと舐め始めました
・
うさぎはその時
空いた穴のことを思い出したのです
そして
その穴が埋まってゆくように感じて
もう一羽のうさぎのなすがままに
受け止めることにしてみたのです
・
それから
二羽のうさぎは
いちご畑に咲いている黄色な花を
仲良く一緒に食べました
・
いつの間にか
ぽっかり空いたはずの穴は
消えてなくなっていました。