芽生え

診察が終わると

少女は近寄ってきて

マスクのうえから

キスをした

挨拶のつもりだったのだろうか

気持ちをそのまま

伝えるつもりだったのだろうか

そこには

その場のまわりの状況も

照れくささも存在しない

きっと

ありのままの

気持ちを

ありのままに

形にした

純粋な行動

誰にも止めることは出来ない

少女はそうしたいから

そうした

それ以上の意味も

それ以下の意味もない

周りにいた大人たちは

あっけにとられた

大人たちの感じ方は

大人の階段をのぼる途中で

かたどられた経験則

サングラスをかけて

太陽を見るような

ものかもしれない

少女もそんな階段を

これから

登っていくのかもしれない

だけど

ほんの少しだけでも

そんな風に行動できた感情を

壊さずにいて欲しい

柔らかくて優しい心の季節

芽生えの季節

どんな花が咲くのだろう