虚蝉

五日前に今年の夏初めて

蝉の鳴く声が聞こえた

たった1匹のアブラゼミの

鳴き声

1日だけ鳴いてその後は

聞こえなくなってしまった

蝉の声のした樹木まで行ってみると

蝉の抜け殻が

木の幹にしがみついたまま残されていた

梅雨が短かったせいなのか

急に暑くなったせいなのか

空蝉という形骸が愛おしくなった

自然の摂理

もう少しすれば聞こえてくるのだろうか

それとも空蝉を眺めたまま

夏は過ぎてしまうのだろうか