贈与論

世の中が贈与の関係で

成り立っているとすると

特に人間は

お金を受け取った時に

一番いい表情筋が動く

お金を渡して

嬉しそうな顔を見ると

人間の最も弱い部分が

露呈するのがわかる

感情の贈与を

コミュニケーションと呼ぶなら

それは儚くて

ガラスのように

視座の見通しが

透明な時と

曇ってしまう時がある

お金なしでは

生きていけない現実の中では

愛なしでは

生きていけない仕草は

かすんで見えてこない

一体、誰と

感情の贈与を

すればいいのだろう

わたくしは

迷い子のように彷徨って

安心して

本当の眠りにつくことが

できていないのかも知れない