路面電車から眺める
古くからある街並み
路面電車に乗り込んで
車窓から眺める景色は
モノトーンの
インストゥルメンタル
脳裏に浮かぶ
代わり映えのない
廃屋の街
込み入った路地が
絡み合って
あまりにも
落ち着き払っている
フランスにいた頃に
足しげく
通っていたカフェの
すぐそばで売られていた
場違いな油絵を思い出した
見慣れた風景に眼を閉じ
自然に聞こえてくる音に
集中することにした
聞こえてくるのは
雨音を背景に
線路のきしむホワイトノイズ
そしてつり革の揺れる音
いたたまれなくなった感情は
電車を降りた。
人並みが黄昏色に染まっていた