遠い影

遠い影を

握りしめた

 

遠い影は

感情と体温を

持っているように

想われた

 

後ろ髪を引かれるように

手のひらからこぼれ落ち

 

そのまま暗闇の中を

遠ざかって色合いを失い

 

追いかけてくるでもなく

点滅する信号機の色に紛れて

現実の中へ戻っていった

 

遠い影は、影ではなくなった

 

実体のない虚像となり

かすかに想い出すことの出来る

記憶の残像でしかなかった

 

遠い影を

握りしめた

 

遠い影は

感情と体温を

持っているように

思えた

 

あの遠い影に

また逢えるのだろうか

 

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松浦亜弥 – 渡良瀬橋