青いリンゴ

青いリンゴをかじったとき

僕は思い出したんだ

 

白いスカートの裾で

リンゴを拭いて

僕に投げてきたよね

 

受け取ったリンゴを

そのままかじった

 

酸味の残った青い香りが

あたりに散らばった

 

君はおどけた微笑みで

クスクスと笑っていた

 

そのあと野生の風が

ふたりをすり抜けていった

 

いつの間にか

夕焼けがまぶしくなっていた

 

かじりかけの青いリンゴは

海に浮かんでいた

 

どういうわけか

波に押し返されずに

海の上を

遠くへ、遠くへと

遠ざかっていった

 

Alone again

 

青いリンゴと一緒に

君まで姿が見えなくなっていた

 

もう少し眺めていたかったんだ

海を遠くまで

 

わがままが

海をもっと青くした

 

そのまま海に飛び込んで

浜辺に戻った時には

僕もブルーに染まっていた

 

びしょ濡れのまま

座り込んで

もう一度

海を眺めていた

 

あの海、

あの砂浜は、

今頃どうしているのだろう

カモメは飛んでいるのだろうか

 

古い記憶のように色あせて

風の藻屑となって

実存を

失ったかもしれない

 

淡い潮風と一緒に

吸い込むことが

出来ればいいのに

 

日記に文字を残せないくらい

一瞬の出来事

 

投げかけた

青いリンゴの行方