“E”

あの霧深い暗闇の中で

あの照明灯ひとつない山道で

バイクを走らせていた

 

無用心にも

ガソリン・メーターが

“E”を指していることを

忘れていた

 

あの霧深い暗闇の中で

あの照明灯ひとつない山道で

頼りにしていた

バイクの明かりも

なくしてしまった

 

バイクを引きながら

歩いたり

またがって

坂道を滑ったり

 

どれくらいの

時間が過ぎているのかも

わからないまま

人里にたどり着いた

 

道路脇の街灯の下で

“E”の文字を

ずっと眺めて

立ち尽くした

 

アンニュイな感覚に

閉じ込められて

“E”の本当の意味を

考えていた。

 

なにが

“Empty”なんだろうか、って