Self Portrait 1

[誕生から小学6年の半ばくらいまで]

自分をさらけ出してみよう。

ひとりひとり、違う。

それを批判したり、

批判されたり、

他人を誹謗中傷するのは

違うと思う。

僕の場合はこうだった。

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 仮死で誕生

夜泣き名人

病弱

よく熱を出して

母親を心配させた

百日咳

麻疹

水痘

おたふくかぜ

風疹

アナフィラキシー

薬疹

全部経験した

毎週、小児科に通っていた

もう出す薬がないと言われた

(今から50年以上前の話)

それでも優しい開業医の先生で

白衣のポケットから取り出した

たばこを吹かしながら

おかあちゃんと話をしていた

一生懸命な感じが伝わってきた

僕の病気はなかなか治らなかった

ヤブ医者やと思った

でも先生が好きだった

この人みたいに

お医者さんになりたいと思った

勉強せな、なれへんで。と言って

優しく笑ってこちらを見ていた

へえ、そうなんや

でも

そんなこと、知らんけど。

この人みたいに

お医者さんになりたいと思った。

親戚のおっちゃんが

肺がんで大学病院に入院していた

おかあちゃんと一緒に

何度も何度もお見舞いに行った

病室であばれていたら

主治医の先生に怒られた

それからはおとなしくした

主治医の先生は

いつも目が赤かった

髪の毛がボサボサだった

しんどそうだった

でも

一生懸命な感じが伝わってきた。

おっちゃんは死なはった。

でも主治医の先生が好きだった

この人みたいに

お医者さんになりたいと思った。

幼稚園へは2年保育で

半年も行っていない。

行きたくなかったし、

行くと風邪をひく

みんなと一緒のことを

するのがつまらなかった

幼稚園の制服を着るのは

おかあちゃんと

離ればなれになる儀式

悲しかった

お迎えバスの中で

オシッコ漏らした

おかあちゃんと

離ればなれになる不安

おかあちゃんと

いつも一緒にいたかった

おかあちゃんのおっぱいを

飲んでみたかったが

飲んだ記憶がない

牛乳大嫌い

トマトジュースと

マミーと

コーヒー牛乳が大好き

バナナと苺が大好き。

小学生になった。

ランドセルが嫌いで

ほとんどスポーツバックで

通学していた。

自分には

同じことができないと思った

友達のランドセル姿を見ると

不思議に思えた

あんなかっこの悪いこと

自分にはできないと思った。

小学校4年3学期不登校。

好きな女の子に振られたことが

その理由だとは

誰にも言えなかった。

少年野球

虫取り

魚釣り

その3つで

頭の中はいっぱいだった

宿題はしたことがない

算数のテスト0点

ゴミ箱に捨てて担任に叱られた

漢字テスト最高点25点

それでも母親は怒らない

笑ってた

たいしたことじゃないと。

理科は生物の分野は出来た

化学反応とか実験は嫌いだった

結果がどうなるか

分かっているのに

わざわざ変な匂いのする

理科室に移動して

それを確かめたりするのが

めんどくさいと思った。

「にさんか・たんそ」か

「にたんか・さんそ」か

どちらが正しいのかさえ

よくわからなかった

知りたいとも思わなかった。

学校の担任の先生は

おばかな少年を

馬鹿にしていた

お勉強の出来る子とは

明らかに扱いが違った。

こどもは

そういう感覚には長けている。

給食の食パン

焼かずに食べると美味しくない

教室のストーブであぶっていたら

担任の先生が来て

食べ物を粗末にするなと言って

その食パンを僕の顔に投げつけた。

僕はとてもショックを受けた。

美味しく食べることが

食べ物を大切にいただくことだと

おかあちゃんに教えられていたから。

家に帰って

その話をしたら

嫌やったら食べんと、

持って帰っておいで

と言われた。

9回連続で宿題を忘れたら

担任の先生が

家庭訪問して

おかあちゃんに

家でどういう教育をしているのかと

上から目線で圧をかけていた。

おかあちゃんは、言った

9回ほったらかしておいて

どうして1回目で

言いに来なかったのか

そもそも宿題って何ですか?

うちでは勉強以外にすることが

たくさんあります

毎日それをやらせていますよ

本人のすきなことを。

勉強なんて学校ですることと

ちがうんですか

なんで宿題出すんですか

先生の教え残しを

家でやれてということですか

宿題出さなくても良いように

学校で教えきって下さい

うちの家は宿題をさせません

勉強は親が強制することではなくて

おもしろいと思うから

やるもんではないですか

野球や虫取りや釣りと

何の違いがあるんですか

宿題しないのを親のせいにするとは

どういうことですか

こどもが勉強に興味を持てるように

出来ていない先生に責任があると思いますよ

とにかくうちでは宿題をさせませんから、

どうぞお帰り下さい。

僕はその日から

おかあちゃんと担任の先生の

板挟みになった。

考えた。

どっちが怖いか?

お母ちゃんの方が怖い

だから

宿題はしなかった

だから

学校ではいつも

後ろに立たされていた

僕はそれでも良かった。

窓の外を眺めて

野球のことや

カブトムシのことや

魚釣りのことを

ずっと考えて

自由に過ごせたから。

ある時、

お母ちゃんと時代劇のテレビを見ている時に

豊臣秀吉の話になった。

豊臣秀吉ってどんな人なんやろう

そう考えて

本屋に行って分厚い本を買ってきて

全部読んでしまった。

そのタイミングで

学校の社会で

豊臣秀吉の説明をしていた

先生よりも僕の方が

詳しく知っていることがわかった。

家に帰って

お母ちゃんにその話をした。

それが勉強ってものや

興味を持って

好きになって

本を読んだら

よく分かるやろ。

学校の先生が

何でも知っていると思ったら

大間違いやで。

勉強は自分でするもんや。

ホンモノの勉強をするのに

学校の授業は必要ないことを

実感した。

一冊分厚い本を読めば、

学校の先生よりも自分の方が

物知りになれる。

自分が知りたいと思ったことは

自分で本を読んで考える

よくわからなかったら

よく知っている人に話を聞く。

そしたら

学校って

何をしに行くところなんやろう?

小学校6年生の僕が出した結論

「学校は友達に会いに行くところ」

勉強は野球や虫取りや釣りと同じで

自分で楽しんでやるもの

ある種の権威から解放されて

2と3の並んだ通知簿も興味がなくなった。

僕は教科書を一切開かなくなった

自分で本屋で選んできて

自分で読み、考えた。

勉強は

誰かに押さえつけられて

無理矢理詰め込まれるような

つまらないものではない。

僕には僕のやり方があるんだ。

勉強は

虫取りの工夫や

上手く魚を釣るための工夫と

同じだとわかった

そこから快進撃が始まった。

お母ちゃんは僕に言った。

「おまえは、

電信柱で何度も

頭打たないと

分からないくらい、

あほ。

だけど、

きっと、金の卵。」