VENUS

季節外れの道端に

あまり見かけたことのない

青紫の花が咲いていた

こちらをみて

微笑んでいる気がした

待ち合わせの恋人が

やっと来てくれたときのような

笑みを浮かべていた

何気ない雰囲気のまま

通り過ぎようとした時、

わたくしの左手を握りしめ

上着のポケットにしまい込んで、と

話しかけられている錯覚にとらわれた

ひとけのない路地に

青紫の花は咲いていた

そして気がつくと

わたくしの心の中に入り込んで

住み着いている

なぜか、しあわせだと感じている

青紫色かどうかはもうわからない

ただ、心の中身を暖めてくれている

季節外れの道端で見つけた花

いつの間にか

わたくしの一部分になった