「ありがとう」をもらったから

世界を救えって

日本を救えって

残念ながら

僕には

そんな力はない

この30年間

僕にできたことは

目の前の患者さんを

その命を

救うことに

全力を尽くすことだけ

自分の目の前のことだけに

集中して

そこから外側の

世の中のことは

何もわかっていない

かもしれない

白衣を着た時からは

有名になりたいとか

偉くなりたいとか

そんなことは

考えたこともない

そんなことを

考えて生きている人を

羨ましいとも思わなかった

ただ自分の目の前の

小さな世界の

尊い命を救うことだけ

命を守るためには

何ら勲章など必要がない

世間知らずの

つまらない凡人であっても

そう言われても

僕は別に困らない

なぜなら

目の前の人たちの

「ありがとう」を

たくさん

もらったから