かもめ

かもめが飛んでいるのに

砂浜を見ている

 

かもめが鳴いているのに

海を眺めている

 

不可解な感情

 

不調和音で

ピアノをいじめるように

自分の作り出した

迷信に迷い込んで

時空間の歪んだラビリンスの中にいた

 

かもめを見ちゃいけないよ

かもめの鳴き声を

聞いちゃいけないよ

 

視線をあげることすら出来ず

砂を握りしめて

手のひらから

砂時計を垂らしていた

 

砂がすべて手のひらから

抜け落ちた瞬間

かもめは

いなくなっていた

 

目線を上げて

真っ赤な夕焼けが

映えている海を

ぼんやりと吸い込んだ

 

それは

唯一の真理に違いなかった