こどもの日〜賞味期限のある祝日
こどもの日に
家にいたことが
ほとんどなかった
いつも
病院で働いていた
たいてい
こどもの日は
当番だった
こどものそばに
いてやりたかったが
そういうわけには
いかなかった
こどもの日に
家にいることが
出来るようになった
しかし
家の中には誰もいない
成長すると
こどもの日は
こどもの日では
なくなってしまう
こどもの日には
賞味期限があるんだ
だから、賞味期限が切れたんだ
子どもの成長を
むしろ喜ぶべきなんだ
こどもの日は
子どもの時にしか
味わえない祝日という
特有の性格を持っている
昭和時代、
新聞紙で兜と剣を作って
首振り虎を退治して遊んで
風に揺れる鯉のぼりを眺めて過ごす
1日だった
平成時代、
それを次の世代へ伝えたくて
首振り虎を退治しようとしたら
教育上よくない、と言われた
風に揺れる鯉のぼりを探すのに
苦労する有様だった
令和時代が訪れた
こどもの日
それ自体を知らない子供達が
増えているという
親たちも
何をすればいいかわからないという
新聞を毎日取る家庭が加速度的に減少し
兜も剣も作れない
こどもの日
ひなあられや三色ゼリーを食べるわけでもなく
カボチャでオブジェを作るわけでもなく
ケーキを食べるわけでもなく
チョコレートを渡すわけでもない
商業路線にも乗らない祝日に
人々の関心は集まらない
連休の狭間で意味を考えることもなく
素通りされる一日になってしまった
だけど
連休が途切れないようにするための
ボンドの役割をする日ではない
祝日って、ひとつひとつ意味があるんだ
ゴールデンウィークなんて言葉で
一括りにしてしまうと
一日一日の意味を誰も考えなくなる
こどもの日
少子化の時代の流れの一方で
メディア媒体が大きく変化して
大人の活字文化の衰退と
大人の資本社会の隆盛の
影に隠れて目立たなくなった
いつの間にか
ビンテージものの
蒸気機関車みたいな一日
祝日にも、
「盛者必衰のことわり」が
あるのだろうか
こどもの日、だけど
大人が、こどもにとって、
時代を超えて大切なものは
何なのか?
もっともっと
考えてやらないと
消えてしまうかもしれない
こどもの日は、大人の日。