ただ、風が。
風が吹いていた
ただ
風が吹いていた
・
脳裏に浮かぶ
数多の風景の中に
かならず
あった気がする
名も知らぬ風
・
吹き抜ける風に
励まされたり
向かい風に
意地悪されたり
閉ざされた部屋の扉を
開けるのは
いつも風
・
ぬかるんだ心の汗を
乾かしてくれているのが
風だと気付いた時、
通り過ぎて
いなくなっていた
・
いつのまにか
扉を開けて
風が通り過ぎるのを
待つようになった
・
風は吹いてくる
きっと
吹いてくる