まさゆめ

怖い夢を見た。森を通り抜けようと道を探す

が、一つしかない。そこにはおびただしい数

の蛇。水もないポリ容器に閉じ込められて、

裁きの順番を待つ食用ウナギのようにうねり

続けている。粘着質な蛇腹をこすり合わせる

音がして道なりに、森の奥まで続いている。

腐敗臭が漂い、音と臭いで足が冷たくなった。

どうするか。通らざるを得ない不可解な理由

があって、渡るしかない。真っ白なワイシャ

ツの袖をたぐって、鼻を押さえ、一気に駆け

抜けようと腹を決めた。足首まで埋まると、

噛みつかれるかもしれないと、叫び声をあげ

ながら一歩ずつ森の奥へ進んでいった。最後

の一歩で大腿までトグロをまかれ、そのまま

倒れ込んだ。深緑の森はモノトーンにかわり

蛇腹に拍動する心臓らしき球体の赤が大腿か

ら潜り込んで、次第に私の意識は消えていっ

た。目が覚めると、赤い球体は私の心臓と重

なり合って不整な脈拍を送り出していた。私

は蛇オトコである様子だ。口の中から細いヌ

メッた舌が、ぺろぺろと出てくるからだ。口

さえ開かなければ、誰にも気づかれることは

ないだろう。

それ以来、私はマスク越しにしか、人と話を

することができなくなった。怖い夢を人に話

すと、まさゆめにならずに済むと聞き、友人

に話した。気にするなといってくれたので、

ほっとしてマスクを外し、コーヒーを飲もう

としたら、友人が気絶した。怖い夢でも見て

いるのだろうと考えて、顔をなめてやった。