オムライス
幼いころの僕の
ご馳走
ケチャップが
沢山かかっていると
なぜかうれしかった
おいしい
オムライスの食べられる
ありきたりな喫茶店
入り口の扉を開けてもらうまで
階段を上りながら
わくわくしていた
半世紀くらい前の話だから
もうその喫茶店はない
なんとなく
味の記憶が残っていて
学生時代に自分で何度も
作るのを試してみたことがある
食材が普通で
ケチャップも普通で
それでも
記憶の味を探していた
オムライス
今でも僕には
ご馳走
きっと、ずっと
ご馳走
赤と黄色のコントラスト
見た目にいとしい食べ物
きっと、あの頃の
言葉にならない幼稚な
不安や寂しさを
埋めてくれる食べ物だったような