クリスタル・ボックス
遠い記憶の中に
生き残っている
淡い恋心が
思い出の
クリスタルボックスに
詰まっている。
思い出は思い出のまま
残しておこう。
ボックスの外側から
キラキラと輝く
思い出を
眺めていよう。
クリスタルボックスは
開けない方がよい。
万一封印を解いて
開けてしまったら
きっと
宝石のような輝きが
たちまち
ありふれた砂塵に
なってしまうだろう。
もの心つく前の
純粋な気持ちが
さび付いて
綺麗なままでは
いられなくなるだろう。
クリスタルボックスは
白い約束が詰まったまま
海に流してしまおう。
あるいは
忘却の彼方で輝きを放ち
空にかすかに見え隠れする
小さな星にしてあげよう。
そしてこう、言うだろう
さよなら
もう戻ることのない
時間の彼方の
遠い記憶の中に
生き残っている
淡い恋心よ
さようなら。
わたくしは
今を生き
未来を生きる