セピア色の写真

セピア色の写真が

書斎の奥の本棚に眠る

40年前に読んだ

哲学書からこぼれ落ちた

古ぼけた写真に

写っていたのは

「空」

たしか夕焼けの

まばゆい光の反射で

ハレーションを起こして

とても景色とは

思えない構図の

捨ててもおかしくない駄作

どうしてそんな写真を、

おそらくは大切に

哲学書に挟んで

保存していたのだろう

はっきりとした記憶はない

40年前に自覚していた自我像を

抽象化したビジュアル・メッセージに

見立てて

思索していたのかも知れない

今の、わたくしには

そのセピア色の写真が

愛おしく胸を締めつける