チャペルの鐘の丘

チャペルの鐘のある丘に

ひとり登って

風雪を頬に受けている

 

チャペルの鐘の鳴る丘で

凍りそうな手指に

みとれている

 

チャペルの鐘の鳴る丘で

ソファーに寝そべって

灰色の空を眺めている

 

レンガ造りのこの街に

いくつかの灯りが揺れている

 

遠くの海から貨物船が

近づいてくるのが見える

 

リスボンの街外れにある

チャペルの鐘のある丘に

わたくしのうちがわが

たたずんでいる

 

左手には、ミットをはめている

右手には、ボールを握りしめている

 

貨物船にめがけて

大きく振りかぶった後

 

チャペルの鐘の丘で

聖なる響きを受け止めている

 

そんな、はかなさを

空想しているだけなのかも

しれない

 

壁にボールを投げつけて

跳ね返りを受け止める

野球少年のように

 

キャッチボールの相手が

いないことを

嘆いてはいない

 

野球少年は

繰り返し繰り返し

壁にボールを投げつけて

ただ、それを受け止める

 

わたくしは

丘の上の吹きさらしを

頬に受け止めながら

 

海風にさび付いた鐘に

ボールを投げつけて

両手でそれを受け止める

 

チャペルの鐘のある丘の上で

来た道を振り返り

進むべき道を想う