モノトーンの肖像画
電線の上に降り積もった雪が
細い塊で散らばっていく
空は灰白色の黄昏を装い
川面は鉛色の夢想を讃える
木々は凍え、枝先に雪の結晶を装飾する
山々は銀の帽子を深くかぶり
田畑の案山子は傾いて埋もれ
背の丈ほどの草木が
茶色のコントラストで抵抗する
白い華が踊り続ける
自然にあるものはすべて差異を清算して
冬の風景はモノトーンな肖像画にうつろう
無垢なカンバスにパステルカラーの
メッセージが寄りかかり
モノトーンの結晶化を始める
積雪は木々の枝を輪郭化し
イデアの姿を浮かび上がらせる
線路に点滅する
赤いシグナルが青に変わる瞬間
光々と降り続く雪たちが吹き付け
氷河期の白と黒の間隙へ落とし込むと
自然のはかなさに回想のイマージュを
蘇らせては消えてゆく
山肌の巨大な雪が、すべりを起こし
連なる山塊をすり減らしていく
しとやかな銀白色の反応が戯れ
全てを覆い尽くして透き通っていく
( 詩と思想 土曜美術出版販売 2017.06.掲載 )