医療を真面目に考えてみる

かの

ジョン・ホプキンス大学内科学教授であった

ウイリアム・オスラー博士は

次のように提言された。

「医療とは、

ただの手仕事ではなくアートである。

商売ではなく天職である。

すなわち、

頭と心を等しく

働かさなければならない天職である。

諸君の仕事のゆうに3分の1は、

専門書以外の範疇に入るものである。

医学ほど教養の大切な職業はない。

臨床医学ほど教養を必要とするものはない。

良き医師は病気を治療し、

最良の医師は病気を持つ患者を治療する。」

これらの格言は、

「平静の心―オスラー博士講演集」という

書物からの抜粋である。

わたくしは

この本を1984-1986年頃に毎日繰り返し読んでいた。

医学生になる前の話である。

大学院時代に

日野原重明氏が京都大学に講演に来られた時に

この本にサインをもらった。

もともと日野原氏が

日本に紹介流布された方であったので、

年季の入ったかび臭い本に

感慨深い表情をされていたことが忘れられない。

2023年現在、

自分の医師としての経験を踏まえて実感するのは、

医師には医学だけでなく人文系の学問も必要である。

つまり、

患者の視点に立って行うには、

これまでの医学教育だけでは不十分であり、

親愛の情を持って診療を行える医師になるためには、

病を治すことが医師の仕事であることを

前提とした上で、

最良の医師には、

患者に寄り添う者であるという自覚が

求められるということだ。

そのような医師に巡り会えることは、

残念ながら非常に少ない。

本当に信頼できる医師とは

本当に信頼できる人間であることが

前提にある。

人間として頼りになる人が

なおかつ医師であれば、

実にさいわいである。