医者の成長

白衣のポケットが

ちぎれるくらいの

メモを詰め込んで

患者様を診た

片手に持てないくらいの

重い本を

担いで病棟を走り回った

いつも患者様に

「おい、研修医」と、

おどされた。

 

いつからか

白衣のポケットの中身が

わずかのメモと

聴診器だけになった

本をめくるより

患者さんの話を聞く方が

よくわかることに気づいた

それでも、いつになっても、

わからないことは山ほどある

だから、文献を貪って相談する

 

よく見て、よく診て、よく聞いて。

そしたら、

患者さんをエスコートできている

手応えが、身についた

いつの間にか

患者さんに「せんせ、」と

呼び止められるようになっていた