吐息の記憶

さざ波の音を聞きながら

遊歩道を歩いた

長い黒髪をかきあげて

照れくさそうに微笑む君

さざ波に紛れた潮風と

吐息の温もり

カフェに立ち寄ると

君はいつもエスプレッソ

頼んでいたっけ

今頃、

君はどうしているだろう

どこにいるのだろう

しあわせに

暮らしているだろうか

長い黒髪は輝いたままだろうか

女としてのプライドって

言ってた赤いピンヒール

君の赤と黒のシルエット

もう一度、逢いたいんだ

さざ波の音を聞きながら

遊歩道を歩きたいんだ

エスプレッソを飲む

君の笑顔を見ていたいんだ

今頃、

君はどこでどうしてる?

しあわせなら

それでいいんだ

巻き戻せない時間の中で

わずかなレグレットが

頭をよぎる

君の名前が思い出せない

ただ、吐息の温もりの

記憶だけが残っている

あの過ぎ去った遠い日々

僕の心の中で

まだ揺れている

そんな記憶を払拭するだけの現実が

今の僕には

ないのかも知れない