愛について語るとすれば

愛について語るとすれば

わからないと答えるだろう

 

見たことがないのかもしれない

実感したことがないのかもしれない

 

愛について語るとすれば

幻想の一部、と口にして

寂寥の空を見上げ

そっと息を吐き出すだろう

 

現実的な日常性の中で

目に見えない空虚を鷲づかみにして

とらまえようと、もがいているだけ

 

愛について語るとすれば

見逃した流れ星のような

ものかもしれないと答えるだろう

 

もし、

愛という、なにがしかのものがあるなら

見聞きし

手応えを感じ

幻想ではないと信じ

流れ星は立ち止まってくれるだろう

 

愛なら

わたくしのためだけに

立ち止まってくれる

流れ星のようなもの

そして

立ち止まったまま

通り過ぎることのない輝きで

わたくしを癒やしてくれるだろう

 

行き違いも

矛盾も

争いもなく

あるがままの

ぬくもりを

分かち合う時間だけが

途切れることなく

心に宿り続けていくだろう

 

愛について語るとすれば

もともと存在しない

ため息にも似た

心象のかけら

なのかもしれない