気配

背中に感じる何か

夜道の一人歩き

背中に意識を集中して

早足で歩き続けた

街灯が少ないせいで

なおさら薄気味悪い

街灯から街灯まで走った

明かりの下で速度を落とした

すると

地面から足をつかもうとする

黒い何かが向きを変えながら

まとわりついているのに声を上げた

自分の影だった

一人きりなのにはずかしくなって

また歩き出した

自分の影に驚くなんて

一体どれほど小心者なんだろうと

考え事をしていた

そこへ前から

何かが通り過ぎる風を受けて

震え上がった

恐る恐る振り返ると

仕事帰りらしい女性が

横を通ってすれ違っただけだった

ただ近くを通り過ぎただけの人間に

お化けと勘違いして驚いた自分が

再び恥ずかしくなった

その後は全速力で家まで走って帰った

小学生の自分には相当の冒険だった

大人になった今なら

お化けより人間の方が恐ろしいことを

よく知っている

夜道の見知らぬ人間にこそ

用心しなくては。

お化けに用心するなんて失礼な話だ