湖の風とさざ波と

二十歳の頃

 

悲しくなると

寂しくなると

 

湖を見晴らす砂浜に

たたずんでいました

 

潮の香りはありません

 

しかし風に誘われて

動いた湖面が

小さな波になって

足元に近づいてきました

 

風と波に

見守られているようで

 

自分にも

まだ励ましてくれる

自然があったのかと

 

絶望に足をすくわれることは

ありませんでした

 

悲しくなると

寂しくなると

湖を見晴らす砂浜に

たたずんでいた

青年の頃の一風景

 

振り返れば、

現在の自分が

過去の自分の感傷を

慰めてあげている

気がします

 

あの頃の自分

 

風とさざ波が

見守っていてくれました

 

そして今、私自身が

見守って振り返っているのです

 

「君のその空虚な

孤独感と焦燥感は

君自身をきっと

深く深く

大きく大きく

育ててくれる

ことになるんだよ」って

 

今、同じ場所へ行って

時間を線でつなぎながら

あの頃の自分と

出会ってみたい気がするのです

あるいは

あの頃の風とさざ波に

感謝したいのです