潮の香りもないままに

湖畔にたどり着いた風は

優しく はかない

 

湖東から吹く風は

とんびの羽に あおられて

なけなしの勢いで

メッセージ性のない風

 

夏を想うこともなく

たそがれて湖面をゆらしている

 

湖岸にようやくたどり着いて

藤の花ののれんをくぐり

芝生の上をさらって

比叡のおろしと交わって

ゆるりと消えていった