犬の散歩
車を停止して
青信号に変わるのを
待っていた
・
飼い主に連れられた
比較的大きな黒い犬が
突然、立ち止まって
その場に
寝そべってしまった
・
具合でも悪いのだろうか?
・
飼い主はただ
首輪につなげたロープを
何度も引っ張った
犬は起き上がるのを嫌がった
・
次の瞬間
犬はわたくしの方を向いた
・
目が合った
・
寂しそうな目をしていた
悲しそうな目をしていた
・
わたくしが瞬きをすると
犬は起き上がって
強引に引っ張られながら
飼い主と共に歩いて行った
・
信号が青に変わり
わたくしは車を走らせた
・
1分間にも満たないその光景
頭の中で思い返す
映画の一場面のように
何度も何度も
繰り返されていた
・
助けてくれる人は
いないのだと
諦めたのだろうか
それとも
わたくしの瞬きが
伝えたかった気持ちを
捕まえたと、
犬は感じ取ったのだろうか
・
犬は人間に
助けを求めたのだろうか
それとも
共感できる感情を
受け止めてもらえるかどうかを
確かめてみたかったのだろうか
・
フランダースの犬に登場する
ネロとパトラッシュの関係には
なれなかった
・
なすすべもなく
車を走らせた