献身の美学

稀代の天才、三島由紀夫の「仮面の告白」「金閣寺」「憂国」「潮騒」「鏡子の家」「尚武のこころ対談集」をはじめとして様々に、彼の世界を覗いてみた。及んで、三島が重要視する、武士道の「葉隠」に内在する献身の意義をベースにして、彼の考えた美学を辿った。わたくしの考えではなく、彼の見解のご紹介であることを断っておく。わたくしにとっては、彼の生誕100年に際して興味深く学び得たことの、一つである。

自分のためだけに生きる人間ほど

空虚な存在はいない

何か大きなもののために

献身することでしか

人は充実を得られない

自己を捨てることで自己は完成する

自分のために生きることをやめた時に

人生は輝き始める

自己とは内側にあるのではなく

外側に向かう行為の中にしか存在しない

鏡の中の自分を見つめてばかりいるのではなく、

内省ばかり時間を費やすのではなく

何かのために誰かのために

自己から離れた瞬間に初めて自分に出会う

献身なき人間は羽毛のように軽く

自由ばかりを求め責任を負わない

批判はするが自分は安全な場所にいる

こうした人間に重みがあるだろうか

献身の深さが人間の重みを作る

献身する対象を持つことが

どれほど人生を豊かにすることか

献身する対象があって初めて

人生に意味が生まれる

献身とは自己犠牲ではない

献身とは自己完成の道である

何かに全力で献身する経験を持てば

その過程で自分とは何かが見えてくる

献身なき自由は地獄である

献身する対象を見つけることこそ

人生の課題である

献身する対象を見つけた瞬間

人生は輝き始める

見返りを求めない献身

誰にも知られない献身

ただ対象のために尽くす献身

それこそが最も美しい生き方である

彼の着想には途方もない覚悟がある。

圧倒されて、

持論を述べる気持ちには至らないが

なるほど何かに献身する人生は美しい。