羽ばたきゆくもの
どこから来たのだろう
そして
何処へゆくのだろう。
鞄の中に
夢を詰めるだけ詰め込んで
乗り込んだ列車は走り出した。
車窓から見える風景を
ぼんやり眺めている。
トンネルに入った途端
窓に映し出された自分自身が
語りかけてくる。
夢を鞄に詰めちゃいけないよ
ひとつ、ひとつ
鞄から追い出して
鞄を軽くしていくんだ。
空っぽになったら
降りるんだ。
一息入れて
もう一度
鞄の中身を入れ替えるんだ。
鞄の大きさは限られている。
だけど夢は
たびごとに無限にあるんだ。
トンネルから抜け出すと
車窓から見える風景が
様変わりしていた。
少し窓を開けてみたら
鞄に詰めていた
夢たちが隙間から羽ばたいた。
羽を開いた鳥のように飛び立った。
窓を閉じて本を読んでいた。
「隣に座ってもいいですか」
優しい声が聞こえてきた。
とっさに
「どうぞ」と答えた。
その瞬間から
一人で
夢を追いかけなくても
よくなった。
いつの間にか
夢が自分だけのものでなく
大切な人の夢と重なった。
夢は自分のために見るもの
夢は大切な人のために見るもの
鞄に詰め込むものではなく
夢は
大切な人と共有して
いだきしめるもの。
そうすれば
夢は無限大
そうすれば
夢は羽を付けて
幾重にも、幾重にも
羽ばたいてゆく。