肩に乗っかっていた

「明日のことを思い煩うな、

目の前の一瞬一瞬だけを考えて行動せよ」

多忙で押しつぶされそうな若い時期、

いつもそう言い聞かせて

目の前にある、その命に全力を投じていた。

24時間体制の全力投球。

絶対に病気に負けない。患者さんを救う!

しんどいとか、休日がないとか、

弱音を吐くことはしない。

医者の数が足りなくても

自分は三人分の医者の働きをしよう。

そう決めていた。

チーム医療を大切にしていたが、

自分以外に医者がひとりもいなくても

自分の力で患者さんを救おう。

全力投球の覚悟をしていた。

最高で最新の知見を勉強し

臨床医としても患者さんにとって

最適の医療を提供できるように

努力しようと考えた。

医師としてのスキルを磨き、

病気とこころの両方を支える医者として

患者さんの役に立つには、どうすれば良いか。

それだけで頭の中はいっぱい。

自分のすべてを捧げる。それでこそ医者だ。

病気に祝日はない、だから自分も頑張る。

頭の中は常に患者さんのことでいっぱいだった。

そういう姿勢を真に理解し、協力してもらえる

医療者は数少なかったが、いてくれた。

だから、

医者として突っ張って走り続けることができた。

50歳を過ぎると、身体はボロボロで

そんな風に24時間続けることが出来なくなった。

せめて限られた時間の中でも

医者として臨床と研究によって培われたスキルを

患者さんへ還元しなくてはいけない。

そう考えて、開業医の道を選んだ。

思考も身体もオン・オフのスイッチを

切り替えないと、

段々頑張れなくなるものなんだ。

振り返ってみると、

実は、背中に乗っかっていたんだ。

「明日」が。

あの頃の毎日に。

「明日」を背中に乗っけて

遮二無二生きるのが若さ。

今は特別な格言を用意しなくても

生きていられる。

もう「明日」が乗っかっていないのかも

しれないがその分、

片意地張らずに

自然体で生きていられるのが今。

その自然体が心の余裕を与えてくれる。

そうなんだろう。

それが歳を重ねるということなんだろう。

自分の命がおしいわけでもなく

すこしでも長く、皆様の役に立ちたいと

考えれば考えるほど

開業医としての働き方も

そろそろ

検討する必要があるのではないかと

時々考えることがある。

やめたりはしませんよ。

今の自分にやれる範囲での

精一杯の全力投球。

これからも続けていきます。

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岐阜県でのある調査で、

開業医の平均寿命が70.8歳と短く、

特に60歳代の死亡割合が34%と多いことが

明らかになった。

確かに、周りを見ても70歳を機に

閉院する先生が目立つようになってきてはいる。

わたくしは、年齢を気にせず、必要とされる限り

とことんやるつもり。笑。

年齢に応じて、働き方は変えながら、にはなるだろうが。

閑話休題、

すべての都道府県で当てはまる結果とは

考えにくいにしても、

「長生きできない背景には、

勤務医時代からの過酷な労働がある」と指摘、

「開業医の働き方改革も急務」とされている。

年齢別に死亡割合を見ると、

60歳代が34.1%と最も多く、

70歳代が22.4%、80歳代が20.0%と続いた。

全人口で見た、厚労省の年齢別死亡数では、

80歳代にピークがあり、

90歳代、70歳代、60歳という

パターンであることを考慮すると、

開業医の場合は、

ピークが若い年代にシフトしていることが分かる。

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