記憶の通り風

記憶とは

不思議なもの

 

夜店で売っている

リンゴ飴

代わりに家で作った

イチゴ飴

 

うまく固まらなかった

イチゴ飴を食べた途端

ある記憶が蘇った

 

飴とイチゴの入り交じった

匂いが導き出した記憶は

カブトムシだった

 

小学生の頃

カブトムシの餌に与えた

イチゴの匂い

 

なぜ、カブトムシに

イチゴを与えたのか

覚えていないが

 

その時の発酵したような

イチゴの匂いを

ダイレクトに思い出した

 

匂いから導かれる記憶は

いつも幼少期のエピソードと

関係づけられている

 

季節と情景が伴っていて

それほど楽しいことではないが

マイナスのイメージは

呼び覚まされることがない

 

記憶とは不思議なもの

都合のいいもの

 

一過性で

その記憶に固執することはない

 

窓を開けたときに訪れる

通り風のように吹き抜けていく