足音も聞こえないまま

静寂が訪れた

物音ひとつない

まったくの静けさに

取り囲まれた

音を伝播するための

空気すらないのではないか

静寂は言葉さえ無くしてしまう

言葉のない世界

想像できるだろうか

むしろ静寂が

それを教えてくれている

頭の中だけで

言葉は創造と消費を

繰り返している

左手の小指から血が流れている

それをただ見つめている

凍りついた

動かない足を引きずりながら

小指に手を押し当てて

真っ赤な感傷から逃走した

静寂は

真っ赤な世界

言葉のない世界

静寂を

色褪せた海に投げ込むと

打ち解けて

青空が日光浴をし始めた