身勝手な恋愛小説のワンフレーズ風に
ワイオミングの
乾いた青空を見たい
あなたは確か
そう言って、旅に出た
届いたエアメールの
消印はニューオーリンズ
まったく、もう・・・
一言だけ書いてあった
「おまえも来い」
わたしは
どこに
行けばいいの。
教えて欲しい
「おまえにとって、
苦しみでしかない俺なら
俺には、帰る場所がない」
そう言い残して、消えてしまったら
わたしは、探すだろうか。
あなたは言うでしょうね
「いつになったら、この俺に
笑顔が返ってくるだろう」って
あなただけのために
生きているわけじゃないの
私には、私のための日常がある
あなたの思い通りの場所に
わたしは行けない
「俺は、その言葉が怖くて、
旅しているのかも知れない」
あてどない、孤独な旅路
とめどない、幻想
そして、廃退したこころの
傷を癒やす糸口を探し続けている
俺は、いつになれば
俺だけに向けられた
わがままな幸福を
手に入れることが
出来るのだろう
穴の開いたポケットに
詩の言葉を詰め込んでは
足元からこぼれ落ちていくのを
眺めている
この穴の開いたポケットは
気付かれることもなく
縫い合わされることもない
「遠慮なんてしているうちに
運は遠くへ消えちまうぜ」
特別な呪文を語り伝えようとしても
そんな運など結構と、
空から星が降り落ちた
返す言葉も見つからないままに
涙が、風に飛んでいった
「ゆくえは、
行方は、
ユクエは・・・」
涙はポルトガルの海に
静かに溶けて行ったという
海辺には
砂で書いた文字と
ジャック・ダニエルの
空瓶が落ちていた。
かの、フェルナンド・ペソアにだけ、
その意味は伝わるだろう