魔法が使えたら
ひとりの少女が
ドアの前で立ち止まり
ドアに向かって
「ワン・ワン・ワン」
「ニャン・ニャン・ニャン」
「ガオー・ガオー・ガオー」と、
つぶやいている。
何してるんだろう?
「どうしたの?」って聞いてみた
「ドアに魔法をかけているのっ」
「でもね、このドア、開かないんだ」
そんな風に言って、
「ワン・ニャン・ガオー」って
言い続けるから
「開けゴマ!とかどう?」
「むかしはそう言ったけど」って
アドバイスしたんだ
そしたら、その少女
「このドアはね、新しいドアなの」
「だから、
そんな古くさい呪文では開かないの」
そんな風に言って、
「ワン・ニャン・ガオー」って
言い続ける
仕方がないので、
横から、そおっと
ドアを開けてあげた
「ありがとう、
魔法がかかったよ」
そう言って、嬉しそうに
風のように、かけぬけた
魔法ってね
だれかにかけてもらう
ものなんだよ
自分で力ずくで
かけようと
思っちゃだめなんだ
きっと
魔法がかかるときってね
あたたかな人間同士の
贈り物
おだやかな人間関係の
プレゼント